★30秒でわかる!この記事の内容
- 「イノベーションのジレンマ」は、クレイトン・クリステンセン(1952年~2020年)が1997年に提唱した概念。数あるイノベーションの定義のなかでも特に重要なフレームワークであり、イノベーションを理解するうえで欠かすことのできない考え方のひとつ。
- クリステンセンはハーバード・ビジネス・スクールの教授であり、経営戦略やイノベーションの研究における第一人者。1997年に刊行した著書「イノベーションのジレンマ」は世界的なベストセラーとなった。2020年ボストンにて息を引き取る。享年67歳。
- クリステンセンは、イノベーションを、従来製品を改良する「持続的イノベーション」と全く新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」に区分。「イノベーションのジレンマ」は「持続的イノベーション」を重視する優良な大手企業は、「破壊的イノベーション」を行うことのできる新興企業に敗北する現象。
- 次のイノベーションを起こすのは誰か。きっと次世代イノベーターが現れるはず。それはもしかしたら私たちかもしれない。
「イノベーションとは何か?」
イノベーションを理解するために欠かすことのできないフレームワークがクリステンセンの提唱した「イノベーションのジレンマ」と「持続的イノベーション」「破壊的イノベーション」です。
この記事では「イノベーションのジレンマ」についてできるだけ詳しく解説させていただきます。
イノベーションのジレンマ
イノベーションとは、簡単に言えば「新たな価値を生み出し、社会的な変革をもたらすこと」です。
このイノベーションによって、GAFAをはじめとした多くの新興企業が世界的な大企業へと成長する一方、従来、強大な力を持っていたはずの多くの巨大企業がその地位を失っていきました。
そんな大きな変革が現在進行形で起きはじめていた1997年、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンによって「イノベーションのジレンマ」が刊行され、時代の後押しもあり世界的ベストセラーになりました。
「イノベーションのジレンマ」は、イノベーションによって巨大企業が新興企業に敗北するパラドックスを「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」という考え方を使って説明しています。
「イノベーションのジレンマ」、それに「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」は、数あるイノベーション論のなかでも特に重要なフレームワークであり、イノベーションを理解するうえで欠かすことにできない考え方のひとつと言えます。
クリステンセンについて
クレイトン・クリステンセンは1952年にアメリカのソルトレイクシティで生まれました。
両親が敬虔なモルモン教徒だったこともあり、モルモン教系大学の名門ブルガム・ヤング大学に進学。
非常に優秀な学生でしたが、203cmもの長身を活かしてバスケットボールチームに所属したり、2年間休学して韓国でモルモン教の布教活動を行ったりと学生時代は学問以外のことにも打ち込んでいました。
ブルガム・ヤング大学経済学部を首席で卒業後、オックスフォード大学に留学し、さらにハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得。
卒業後はボストン・コンサルティング・グループに就職。
1992年からハーバード・ビジネス・スクールに戻り、博士号を取得後に教職につきました。
1997年に世界的なベストセラーとなった「イノベーションのジレンマ」を刊行。
イノベーション研究の第一人者として一躍、時の人となりました。
2000年にはコンサルティングファーム「イノサイト」を共同設立するなど実業家としての側面も持っています。
ハーバード・ビジネス・スクールの教授を長く勤めましたが、2020年に病気のためボストンにて息を引き取りました。
享年67歳。
持続的イノベーションと破壊的イノベーション
クリステンセンが「イノベーションのジレンマ」を提唱する以前から、市場支配力を有していた優良な既存企業が衰退するという事象が起きていました。
クリステンセンの著書「イノベーションのジレンマ」では代表的な事例として「ハードディスク」が紹介されています。
ハードディスクにおける進化には次の2つの選択肢がありました。
- 同じサイズのまま記憶容量を増大
- 記憶容量を犠牲にしてまでサイズを小さくする
当時のハードディスク業界では当然のように、1.を追求しながら競争を繰り広げてきました。
なぜなら、既存の顧客が1.を求めていて、2.には見向きもしなかったからです。
ところが、新興企業が2.に着目したところ、既存の顧客以外の業界のニーズを開拓して瞬く間に市場を席捲。
市場を支配していた優良な既存企業を衰退させるまでの破壊的な存在となったのです。
なぜ、このような事象が発生したのでしょうか。
当初は優良な既存企業が市場支配力を有していたがゆえに油断と緩慢があったからと考えられていましたが、調べてみると油断や緩慢は一切なく、それどころか極めて勤勉で企業として合理的な行動をとっていたことが分かりました。
優良な既存企業が衰退したのは、むしろ勤勉で合理的な行動をとったことが原因になってというのです。
クリステンセンはその理由を次の5つの原則で説明しています。
- 企業の意思決定は顧客のニーズに依存している
- 小さい市場では大企業の成長ニーズを満たせない
- 存在しない市場は分析できない
- 優秀な既存組織が足かせになる
- 顧客が求めているレベル以上の技術革新を求めてしまう
いずれも優良な既存企業がとる合理的な行動と言えます。
クリステンセンは、イノベーションを、従来製品を改良する「持続的イノベーション」と全く新しい価値を生む「破壊的イノベーション」に明確に区分しました。
優良な既存企業は「持続的イノベーション」を重視するために「破壊的イノベーション」を行うことのできる新興企業に敗北するパラドックス、「イノベーションのジレンマ」が発生するわけです。
クリステンセンは既存企業が「イノベーションのジレンマ」に陥らず、これを打破するための5つの原則を示しています。
- 破壊的技術の商品化は、それを必要とする顧客を持つ組織に担当させる
- 小さい市場にも目を向ける小さな組織に任せる
- 失敗しても犠牲を小さくとどめ試行錯誤を繰り返す計画を立てる
- 既存の事業・組織の価値を押し付けないように注意する
- 新しい特徴が評価される新しい市場を見つけて開拓する
次のイノベーションを起こすのは誰か?
次のイノベーションを起こすのは誰なのでしょうか。
シュンペーターは、晩年、資本力や技術力を有する「大企業」であると言い、クリステンセン、「大企業は戦略的に正しいことしかできないため、破壊的イノベーションを起こすことができない。破壊的イノベーションを起こすことができるのは起業家である」と言いつつも、既存企業が「イノベーションのジレンマ」に陥らないための処方箋を示しています。
今のところ、GAFAを脅かすほどの次世代イノベーターは見えてきていませんが、このままGAFAによる市場支配が続くとも思えません。
次のイノベーションを起こす次世代イノベーターがきっと現れるはずです。
もしかしたら、それは私たちかもしれないのです。
まとめ
以上が本記事でお伝えしたかった内容です。これまでお話ししてきたことをまとめると以下のとおり。
- 「イノベーションのジレンマ」は、クレイトン・クリステンセン(1952年~2020年)が1997年に提唱した概念。数あるイノベーションの定義のなかでも特に重要なフレームワークであり、イノベーションを理解するうえで欠かすことのできない考え方のひとつ。
- クリステンセンはハーバード・ビジネス・スクールの教授であり、経営戦略やイノベーションの研究における第一人者。1997年に刊行した著書「イノベーションのジレンマ」は世界的なベストセラーとなった。2020年ボストンにて息を引き取る。享年67歳。
- クリステンセンは、イノベーションを、従来製品を改良する「持続的イノベーション」と全く新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」に区分。「イノベーションのジレンマ」は「持続的イノベーション」を重視する優良な大手企業は、「破壊的イノベーション」を行うことのできる新興企業に敗北する現象。
- 次のイノベーションを起こすのは誰か。きっと次世代イノベーターが現れるはず。それはもしかしたら私たちかもしれない。
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