★30秒でわかる!この記事の内容
- 複数の資格を取得するダブルライセンスは組み合わせによっては極めて有効。就職や収入アップにも効果的
- 不動産鑑定士は、単独でも十分に希少性が高く、安定収入を得られやすい資格であるが、多くの資格試験と試験範囲が類似しており、かつ、実務的にも相性が良く、相乗効果の高い資格が多い
- 具体的には、不動産関連では、①一級建築士、②宅地建物取引士、③マンション管理士、④管理業務主任者、⑤賃貸不動産経営管理士、⑥土地家屋調査士など、法務関連では⑦司法書士、⑧行政書士などと相性がよい。また、実務的には⑨税理士、⑩中小企業診断士との相乗効果が高い
「せっかく不動産鑑定士試験の勉強をするんだし、試験内容が類似した他の資格にもチャレンジしてみたい。どんな資格をとると効率的なんだろう?」
「不動産鑑定士の資格を活かしつつ、さらなるステップアップのためには、どんな資格をとったらいいんだろう?」
この記事では、そんな疑問におこたえすべく、不動産鑑定士と試験範囲が類似しており、かつ、実務的に相性の良い資格について、できるだけ詳しく解説させていただきます。
ダブルライセンスは組み合わせによって極めて有効
ダブルライセンスとは、複数の資格を取得することをいいます。
資格は専門家であることの証。
専門家の証を複数合わせ持つダブルライセンスは非常に有効です。
一方で注意しなければならないのは、関連性の低い資格を取得してもあまり効果は得られないということ。
ダブルライセンスはやはり組み合わせ次第ということになります。
専門分野をさらに深堀して複数の資格を取得すれば、顧客の評価・信頼は高まるでしょうし、専門範囲をさらに拡げて複数の資格を取得すれば活躍できる範囲も拡大します。
また、就職や転職する際には企業の評価があがり、独立開業できる可能性も高まるはずです。
ダブルライセンスは組み合わせによって極めて有効で、就職や収入アップにも効果的です。
不動産鑑定士は相性のよい資格・相乗効果の高い資格が多い
不動産はわたしたちの生活基盤であり最も身近な資産のひとつ。
世の中の多くの事柄は大なり小なりなんらかの形で不動産と関わっています。
ですので、不動産のプロフェッショナル・スペシャリストである不動産鑑定士は守備範囲が広く、法務、税務、経済、会計、金融など、さまざまな専門分野と深い関わりを持っていて、隣接する専門領域も広範囲にわたるというわけです。
言い換えれば、不動産鑑定士と相性がよく、相乗効果の高い資格がたくさん存在する、ということになります。
また、不動産のスペシャリストである不動産鑑定士には、不動産に関するコンサルティングができるだけの高度かつ総合的な専門的知見と幅広い知識が求められます。
不動産鑑定士試験は民法、経済学、会計学といった幅広い分野から出題され、その結果、他の資格の試験内容とも、類似していたり、重複していたりすることになります。
不動産鑑定士は、相性や相乗効果という視点と試験勉強の効率性という視点の両面でみてもダブルライセンスの効果が高い資格ということができます。
不動産鑑定士とのダブルライセンスが効果的かつ効率的な資格
不動産鑑定士とのダブルライセンスが効果的かつ効率的な資格は、不動産関連、法務関連、実務関連の3つに分類することができます。
不動産関連
不動産のプロフェッショナル、スペシャリストである不動産鑑定士がほかの不動産関連の資格を取得すれば、専門分野をさらに深堀することになり、顧客の評価・信頼を高める効果を期待できます。
一級建築士
一級建築士は、国土交通大臣の免許を受け、設計・工事監理等の業務を行うための資格です。
建築士の種類には、一級建築士のほか二級建築士や木造建築士などもありますが、一級建築士は設計・工事監理に複雑・高度な技術を要する建築物を含むすべての施設の設計および工事監理を行うことができます。
不動産鑑定士は不動産のプロフェッショナルですが、実のところ建物の技術面についてはそれほど得意ではありません。
一方の一級建築士はその逆で、不動産全般、特に土地についてはそれほど強くありませんが、建物に関してはまさにエキスパート。
不動産鑑定士と一級建築士の両方の資格を持っていると互いの弱点を補完し合うことができますので、土地・建物両面に強い正真正銘の不動産のプロフェッショナル・スペシャリストと言えるでしょう。
資格試験で重複する科目は少ないものの、不動産鑑定士との相性は抜群です。
ただし、一級建築士になるための最短コースは大学の建築学科を卒業することなので、建築学科出身ではない不動産鑑定士が一級建築士を目指すのはややハードルが高いかもしれません。
逆に、建築学科出身の方や一級建築士の資格を持っている方には不動産鑑定士へのチャレンジを是非おすすめしたいところです。
- 不動産鑑定士との相性:★★★★★
- 難易度 :★★★★★(偏差値65くらい)
- 勉強時間の目安 :1,500時間
宅地建物取引士(宅建士)
宅地建物取引士(宅建士)は、国家資格試験である宅地建物取引士試験(宅建試験)に合格し、試験を実施した都道府県知事の資格登録を受け、かつ、当該知事の発行する宅地建物取引士証の交付を受けた者をいいます。
宅建士の主な役割は不動産取引の手助けをすることであり、宅建士には重要事項説明などの独占業務(専権業務)があります。
不動産取引の専門家なので、当然のことながら不動産鑑定士との相性・相乗効果は抜群に高い資格です。
試験形式は四肢択一マークシート方式。民法、法令上の制限など不動産鑑定士試験と重複する分野も多く、不動産鑑定士試験での勉強が宅建試験対策においても大きなアドバンテージになるはずです。
宅建士の資格保有者がステップアップのために、不動産鑑定士にチャレンジするもよし、不動産鑑定士試験に合格したあとに、勉強して得た知識を活かして宅建試験にチャレンジするもよし、是非、ダブルライセンスへのトライをおすすめしたい資格です。
- 不動産鑑定士との相性:★★★★★
- 難易度 :★★★☆☆(偏差値55~60くらい)
- 勉強時間の目安 :250~400時間
マンション管理士
マンション管理士は、マンションの運営管理に関する助言業務等に従事するための国家資格です。
宅建士や、後ほどご紹介する管理業務主任者とあわせて不動産三大資格、三冠資格(トリプルクラウン)などと言われています。
不動産鑑定士との相性・相乗効果は高く、不動産鑑定士とマンション管理士の両方の資格を持っていれば、マンションに強い不動産鑑定士として高く評価されるはずです。
試験形式は、四肢択一のマークシート形式(50問)で、試験科目も民法、区分所有法、不動産登記法、都市計画法、建築基準法など重複する分野も多く試験勉強の効率面でもダブルライセンスのメリットは高いと言えます。
- 不動産鑑定士との相性:★★★★☆
- 難易度 :★★★★☆(偏差値60くらい)
- 勉強時間の目安 :500~600時間
管理業務主任者
管理業務主任者は、マンション管理のマネジメント業務等に従事するための国家資格です。
宅建士、マンション管理士とあわせて不動産三大資格、三冠資格(トリプルクラウン)などと言われています。
不動産鑑定士との相性・相乗効果は高く、不動産鑑定士と管理業務主任者の両方の資格を持っていれば、マンション管理に強い不動産鑑定士として高く評価されるはずです。
試験形式は、四肢択一のマークシート形式(50問)で、試験科目も民法、区分所有法、不動産登記法、建築基準法など多くの分野で重複しており、試験勉強の効率面でもダブルライセンスのメリットは高いと言えます。
- 不動産鑑定士との相性:★★★★☆
- 難易度 :★★★☆☆(偏差値55~60くらい)
- 勉強時間の目安 :250~400時間
賃貸不動産経営管理士
賃貸不動産経営管理士とは、主に賃貸アパートやマンションなど賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を持った専門家です。
現在は国家資格ではありませんが、今後、国家資格に昇格させようという動きもあり、これからが楽しみな注目の資格です。
この資格もマンション管理士や管理業務主任者と同じように不動産鑑定士との相性がよく、相乗効果も高い資格です。
試験形式は、四肢択一のマークシート形式(50問)で、試験科目も民法や借地借家法などが重複しており、試験勉強の効率面でもダブルライセンスのメリットは高いと言えます。
試験の難易度は現時点ではそれほど高くはありませんが、今後、国家資格化されると難しくなる可能性があります。
- 不動産鑑定士との相性:★★★★☆
- 難易度 :★★☆☆☆(偏差値50くらい)
- 勉強時間の目安 :100~150時間
土地家屋調査士
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記の専門家です。
土地や建物の所在・形状・利用状況などを調査し、図面の作成や不動産の表示に関する登記の申請手続などを行うための国家資格です。
土地家屋調査士と不動産鑑定士は同じ不動産関連資格ですが、専門領域の重なる部分はやや少なめです。一人二役をこなすというよりも、ビジネスパートナーと助け合いながら分担して仕事をするほうが効率的かもしれません。
ただ、独立開業する際には業務範囲が拡大する効果を期待できます。
不動産関連資格ではありますが、のちほどご説明する司法書士や行政書士などと類似した資格と言えるでしょう。
独立開業しやすい資格でもありますので、試験の難易度は高めです。
- 不動産鑑定士との相性:★★★☆☆
- 難易度 :★★★★☆(偏差値60~65くらい)
- 勉強時間の目安 :3,000時間
法務関連
不動産鑑定士は不動産関連法務に関する知見も有していますので、その専門範囲を法務全般に拡大することができれば、活躍できる範囲もさらに拡がることが期待できます。
司法書士
司法書士は登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家。
登記や供託の代理、裁判所や検察庁、法務局、公証役場に提出する書類の作成提出、財産管理業務、経営管理業務、その他の法律事務などを行うための国家資格です。
不動産取引、特に不動産売買において必ず登記が必要になりますが、そんなときに活躍するのが司法書士。
不動産鑑定士と司法書士、両方の資格を持っていれば、独立した際に報酬を得る機会も増えることになります。
試験形式は、記述問題や口述試験などもありますが、試験科目は、民法、不動産登記法、借地借家法、区分所有法などが重複しています。
司法書士は独立開業しやすい資格でもあり、やはり超難関資格の一つです。
- 不動産鑑定士との相性:★★★★☆
- 難易度 :★★★★★(偏差値65~70くらい)
- 勉強時間の目安 :3,000時間
行政書士
行政書士は、官公庁への提出書類等の作成や提出手続きの専門家。
官公庁に提出する書類及び権利義務・事実証明に関する書類を作成したり、提出手続きを代理・代行したり、書類作成に伴う相談に応じたりするための国家資格です。
専門領域の重なる部分はやや少なめですが、不動産に関する行政手続きを行う際にはダブルライセンスの効果が期待できます。
試験形式は、記述問題などもありますが、試験科目として民法が重複しています。
行政書士は独立開業しやすい資格ですので難易度はやや高めです。
- 不動産鑑定士との相性:★★★☆☆
- 難易度 :★★★★☆(偏差値60くらい)
- 勉強時間の目安 :600時間
実務関連
税理士
税理士は、税務・会計の専門家であり、各種税金の申告・申請、税務書類の作成、税務相談等を行うための国家資格です。
税理士にしかできない独占業務(税務代理、税務書類の作成、税務相談)があり、独立開業に向いている資格の一つです。
不動産関連資格ではありませんが、不動産と税務は関連の深い分野。
不動産鑑定士と税理士のダブルライセンスは、税務に強い不動産鑑定士、不動産分野に強い税理士として顧客の信頼を獲得しやすくなり、報酬を得る機会も増えるはず。
不動産鑑定士との相性・相乗効果も高いため、もしダブルライセンスを目指すのであればチャレンジをおすすめしたい資格と言えます。
ただし、試験の難易度は非常に高く、受けるとなるとそれなりの覚悟が必要です。
税理士の試験科目は幅広い一方、科目合格が認められています。税法など不動産鑑定士試験と重複する分野も多く、不動産鑑定士試験での勉強が税理士試験対策においてアドバンテージになります。
- 不動産鑑定士との相性:★★★★★
- 難易度 :★★★★★(偏差値70くらい)
- 勉強時間の目安 :3,000時間
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家であり、法律上の国家資格者です。
中小企業診断士は日本で唯一の経営コンサルタントの国家資格であり、「日本版MBA」とかAIへの代替可能性の低い職業のひとつ、と言われています。
いわゆる独占業務はありませんが、経営全般を幅広く理解し、経営コンサルタントや事業会社でも経営企画等の中枢部門で活躍できるほか、新規事業を起業できる可能性もあることから、資格の人気ランキングではトップクラスに人気を誇っています。
不動産鑑定士と中小企業診断士、あまり関連がなさそうに見えますが、意外と相性が良いと考えています。
製造業は工場を持っていたり、小売業は店舗を持っていたり、卸売業は倉庫を持っていたり、旅館は宿泊施設を持っていたり、企業は結構、不動産を保有しています。
不動産鑑定士が有する不動産に関する専門的な知見は、きっと経営コンサルティングにおいて役に立つはず。
また、中小企業診断士の幅広い知見は、不動産コンサルティングにおいて力を発揮するでしょう。
試験の難易度は高いですが、不動産鑑定士の資格を持っていると、中小企業診断士1次試験の科目のひとつである「経済学・経済政策」が免除になるなどそれなりのアドバンテージがあります。
- 不動産鑑定士との相性:★★★★☆
- 難易度 :★★★★☆(偏差値62くらい)
- 勉強時間の目安 :1,000時間
まとめ
以上が本記事でお伝えしたかった内容です。これまでお話ししてきたことをまとめると以下のとおり。
- 複数の資格を取得するダブルライセンスは組み合わせによっては極めて有効。就職や収入アップにも効果的
- 不動産鑑定士は、単独でも十分に希少性が高く、安定収入を得られやすい資格であるが、多くの資格試験と試験範囲が類似しており、かつ、実務的にも相性が良く、相乗効果の高い資格が多い
- 具体的には、不動産関連では、①一級建築士、②宅地建物取引士、③マンション管理士、④管理業務主任者、⑤賃貸不動産経営管理士、⑥土地家屋調査士など、法務関連では⑦司法書士、⑧行政書士などと相性がよい。また、実務的には⑨税理士、⑩中小企業診断士との相乗効果が高い
この記事が皆さまのお役に立つと嬉しく思います。
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