不動産鑑定士試験の過去問を実際にみてみよう!

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不動産鑑定士について
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★30秒でわかる!この記事の内容

  • 不動産鑑定士試験の出題科目は短答式試験では「行政法規」「鑑定理論」の2科目、論文式試験では「民法」「経済学」「会計学」「鑑定理論」の4科目。各科目から1問ずつ過去問を紹介
  • 最初は難しく感じるかもしれないが、①基本的な文言、定義、要件等は覚える、②テキストを何度も読んで理解する、③過去問を解いてみて、分からなくても解答を書いてみる(最初は答を書き写してもOK!)、これをひたすら繰り返すうちに段々とできるように。
  • 鑑定理論の論文式試験では、「不動産鑑定評価基準」の「暗記」が必要。「暗記」は筋トレみたいなもの。毎日コツコツ憶えることでしっかりと記憶に定着

「不動産鑑定士試験ってどんな問題がでるの?」

百聞は一見に如かず。

不動産鑑定士試験がどんな内容なのかを知るためにはやはり実際の過去問をみてみるのが一番です。

今回は問題を解く必要はありません。勉強を始める前の下見のつもりでどんな問題が出ているのかさらっと眺めてみましょう!

不動産鑑定士試験の出題科目

不動産鑑定士試験は短答式試験と論文式試験の2段階選抜方式です。

各試験の具体的な試験科目、試験時間、出題数、出題形式は次のとおり。

<短答式試験>

試験科目不動産に関する行政法規(行政法規)
不動産の鑑定評価に関する理論(鑑定理論)
試験時間行政法規:10:00~12:00(120分)
鑑定理論:13:30~15:30(120分)
出題数・配点行政法規:出題数40問、配点100点
鑑定理論:出題数40問、配点100点
出題形式五肢択一マークシート方式

<論文式試験>

試験科目民法
経済学
会計学
不動産の鑑定評価に関する理論(鑑定理論)
試験日時民 法      :1日目10:00~12:00(120分)
経済学      :1日目13:30~15:30(120分)
会計学      :2日目10:00~12:00(120分)
鑑定理論(論文):2日目13:30~15:30(120分)
鑑定理論(論文):3日目10:00~12:00(120分)
鑑定理論(演習):3日目13:30~15:30(120分)
出題数・配点民 法      :出題数2問、配点100点
経済学      :出題数2問、配点100点
会計学      :出題数2問、配点100点
鑑定理論(論文):出題数2問、配点100点
鑑定理論(論文):出題数2問、配点100点
鑑定理論(演習):出題数1問、配点100点
出題形式論文式(演習による出題を含む)

実際にどんな問題がでるのか、とりあえず見てみましょう。

以下はいずれも令和2年の問題1です。

短答式試験

不動産に関する行政法規(行政法規)

【令和2年 問題1】

土地基本法(以下この問において「法」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 国及び地方公共団体は、土地についての基本理念にのっとり、土地に関する施策を踏まえ、税負担の公平の確保を図りつつ、土地に関し、適正な税制上の措置を講ずるものとされている。
  2. 法は、土地が投機的取引の対象とされてはならないことを定めている。
  3. 国は、土地利用計画に従って行われる良好な環境に配慮した土地の高度利用、土地利用の適正な転換又は良好な環境の形成若しくは保全の確保その他適正な土地利用の確保を図るため、土地利用の規制に関する措置を適切に講ずるものとされている。
  4. 国及び地方公共団体は、土地利用計画の策定に当たり、地域における社会経済活動の広域的な展開を考慮して特に必要があると認めるときは、広域の見地に配慮するものとされている。
  5. 国及び地方公共団体は、社会資本の整備に関連して土地に関する権利を有する者が著しく不利益を被ることとなる場合には、当該不利益を被る者に対し適切な支援を行うため必要な措置を講ずるものとされている。

ちなみに正解は5です。

不動産の鑑定評価に関する理論(鑑定理論)

【令和2年 問題1】

不動産とその価格の特徴に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 土地は自然的特性として、地理的位置の固定性、個別性(非同質性、非代替性)等を有し、固定的であって硬直的であるが、これは理論的・物理的な意味における土地の特性であり、現実に土地が取引される場合、条件がおおむね類似している土地の相互間では代替性が認められる。
  2. 土地は人文的特性として、用途の多様性、社会的及び経済的位置の可変性等を有するが、これは土地に対して人間が種々の働きかけをする場合に、人間と土地との関係として生じてくる特性である。
  3. 不動産の価格は、交換の対価としての市場価値を貨幣額で表示するとともに、不動産が物理的、機能的又は経済的に消滅するまでの全期間にわたって使用又は収益できることによる経済価値を貨幣額で表示したものでもある。
  4. 不動産の現実の取引価格等は個別的な事情に左右されがちであるため、取引事例比較法の適用に当たっては、取引事例が特殊な事情を含んでいると判断される場合は、適切に個別的要因の標準化補正を行う必要がある。
  5. 不動産の価格(又は賃料)は、その不動産に関する所有権、地上権、地役権、賃借権等の権利の対価又は経済的利益の対価であり、それらの権利利益のそれぞれについて価格(又は賃料)が形成される。

ちなみに正解は4です。

論文式試験

民法

【令和1年 問題1】

資産家であるAは、その 17 歳になる子Bのために不動産業についての経験を積ませることを目的として、Bに対して、自己の所有する甲不動産について修繕等のための契約締結に必要な範囲で代理権を与えている。また、Aは、同じく自己の所有する乙不動産についてはその管理及び処分のための代理権をBに与えている。

以上の事実を前提として、次の設問⑴及び⑵のそれぞれについて答えなさい。各設問は独立した別個の問である。なお、設問及び参照条文は令和元年9月1日時点で施行されている法令に基づくものであり、解答の際には、それ以降に施行された法令に言及する必要はない。

(1)BはAに無断で、Cに対して、Aから甲の処分についての代理権を与えられていると自称して、甲を代金 1,500 万円でCに売り渡す旨の申込をした。Cは、Bの代理権の有無について確認はしていないものの、相場に比して安い提案に魅力を感じ、これを承諾した。この契約に基づいて、代金の支払いと同時に所有権移転登記が経由された。なお、このBの行為についてAは事後にも承諾を与えていない。

この場合において、AはCに対して、所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができるかについて、論じなさい。

(2)Dは、Aから乙不動産をだまし取ろうと考え、乙を管理するBに対して「乙土地を含む周囲の土地に産業廃棄物が埋設されていること近く明らかになる」などと虚偽の事実を述べ、「地価が下落する前に 1,000 万円で買い取ろう」とBに持ち掛けた。なお、乙の実際の評価額は 2,000 万円程度である。

Bは、Dの欺罔行為により、地価が下落すると誤信し、それによってDとの間で乙を代金 1,000 万円で売り渡す旨の契約を締結した。Dは、乙の引渡後ただちに、乙をEに転売し、これを引き渡した。所有権移転登記についても、AからD、DからEへと順次経由され、現在はEのもとにある。なお転売の際に、Eは、DからBとの取引の経緯について何ら説明を受けていなかった。

その後、Bは、Dにだまされたことに気づき、この件をAに報告した。そこで、Aは、Dとの売買契約を取り消したことを理由にEに対して乙の引き渡しを請求した。

この場合において、AのEに対する請求が認められるかについて、論じなさい。

経済学

【令和2年 問題1】

戸建て住宅市場について、次の設問 ⑴ 及び ⑵ のそれぞれについて答えなさい。

(1)ある町の戸建て住宅価格の動向について調べるために、戸建て住宅が同質財であり、完全競争市場と仮定し、過去のデータから市場需要関数をD= 10 -2pと市場供給関数をS=1+ p と推計した。ただし、Dは需要量(単位:千戸)、Sは供給量(単位:千戸)、pは価格(単位:千万円)である。均衡における戸建て住宅の価格と取引量を求めなさい。

(2)実際には戸建て住宅は異質財であるので、個別の戸建て住宅の価格形成に関しては設問(1)のような分析は十分でなく、交渉や入札等により価格が決まることが多い。戸建て住宅1棟を売りたい売り手が、購入者を募集し、リスク中立的な2名の買い手(買い手1と買い手2)が応募してきたとする。買い手1の評価値は2千万円、買い手2の評価値は4千万円である。どの買い手も自分の評価値だけでなく他の買い手の評価値を知っている完備情報を考える。売り手は二位価格封印入札を実施して価格を決めることにしたが、手続きの簡略化のため、買い手が入札できる入札額を2千万円、4千万円と2つの額だけにした。売り手は落札額を予想するために、この状況を2人の買い手による同時手番ゲームとしてモデル化し、ナッシュ均衡における落札額を計算したいとする。この入札による同時手番ゲームに関して、以下の設問に答えなさい。

ただし、二位価格封印入札とは、セカンドプライスオークションとも呼ばれ、すべての買い手が同時に入札額を封印して売り手に提出し、入札額の1番目に高い買い手が落札し、2番目に高い入札額を支払うようなオークションである。また、2名の買い手が提出する入札額が同じ場合は、1番目に高い入札額と2番目に高い入札額は同じであり、各買い手は 12 の確率で住宅を落札する。そして、落札した場合の買い手の利得は自分の評価値から落札額を引いた値であり、落札できなかった場合の買い手の利得はゼロとなる。

  1. 買い手1の入札額が4千万円、買い手2の入札額も4千万円のとき、落札者、落札額、そして買い手1と買い手2の利得を求めなさい。
  2. 問1を他の入札額の組合せに対しても行うことで、利得表を書きなさい。ただし、すべての組合せについて、落札者、落札額、買い手の利得を明示しなさい。また、利得表は利得行列とも呼ばれる。
  3. 入札による同時手番ゲームにおいて、ナッシュ均衡を言葉で定義しなさい。
  4. それぞれの買い手が正直に入札すること、つまり買い手1は2千万円、買い手2は4千万円で入札することはナッシュ均衡になるかどうかについて簡潔に論じなさい。
  5. 一般的に、買い手が多くなると、入札は交渉と比べてどのような点が長所になるかについて簡潔に論じなさい。

会計学

【令和2年 問題1】

有形固定資産と減価償却について、次の各問に答えなさい。

(1)次の文章は、有形固定資産と減価償却について説明したものである。次の空欄(ア)から(キ)までに入る適切な語句を答えなさい。

有形固定資産とは、(ア)形態を持ち、1年を超える長期にわたって使用される事業用の資産をいう。企業会計原則では、建物、構築物、機械装置、船舶、車両運搬具、工具器具備品、土地、建設仮勘定などが例示されており、その取得原価を当該固定資産の(イ)にわたり、一定の減価償却方法によって各事業年度に(ウ)しなければならないとしている。

有形固定資産は、その性質によって大きく3つのタイプに分類することができる。使用や時間の経過とともに価値が減少していく(エ)、使用や時間の経過とともに価値が減少しない(オ)、そして鉱山・油井・山林などのように採掘・採取・伐採などによって数量的に減少していく(カ)がある。このうち、減価償却の対象となるのが(エ)である。

減価償却の方法には、期間を配分基準とする方法として定額法、定率法、級数法があり、また、生産または用益の提供の度合いを配分基準とする(キ)がある。なお(カ)の場合、減価償却ではなく減耗償却という償却方法が用いられることになっているが、実際の手続きとしては(キ)が用いられている。

(2)減価償却の自己金融効果について、簡単な数値例を示しながら説明しなさい。

(3)3月決算企業のA社は、202X年4月1日に事務用備品 100 万円を購入した。備品の耐用年数は5年であり、A社はこの備品について、200 %定率法を採用することにした。3年目の減価償却額はいくらとなるか計算しなさい。

鑑定理論(論文問題)

【令和2年 問題1】

鑑定評価の条件設定に関する次の各設問に答えなさい。

  1. 条件設定の必要性について述べなさい。
  2. 条件設定に関する依頼者との合意について説明しなさい。
  3. 使用収益を制約する権利が付着している不動産について、その権利がないものとして鑑定評価を行う場合の条件設定について、次の各問に答えなさい。

① 条件設定に当たってどのような観点から妥当性の検討を行う必要があるか説明しなさい。
② 鑑定評価報告書への記載事項について簡潔に説明しなさい。

鑑定理論(演習問題)

【問題】

別紙1〔指示事項〕及び別紙2〔資料等〕に基づき、不動産の鑑定評価に関する次の設問に答えなさい。

問1 本件鑑定評価に関する次の問に答えなさい。

  1. 鑑定評価で求めるべき価格の種類及びその定義について答えなさい。
  2. 取引事例比較法及び賃貸事例比較法の適用における事例の収集及び選択に当たり、投機的取引ではないと認められる事例のほか、事例の選択要件の5つを箇条書きで簡潔に答えなさい。

問2 対象不動産の正常価格を求めるに当たり、次の問に答えなさい。

  1. 取引事例比較法を適用して対象不動産の比準価格を求めなさい。
  2. 公示価格を規準とした価格を求めなさい。
  3. 対象不動産の正常価格を求めなさい。

問3 隣接不動産の正常価格を求めるに当たり、次の問に答えなさい。

  1. 取引事例比較法を適用して隣接不動産の比準価格を求めなさい。
  2. 収益還元法(土地残余法)を適用して隣接不動産の収益価格を求めなさい。
  3. 公示価格を規準とした価格を求めなさい。
  4. 隣接不動産の正常価格を求めなさい。

問4 一体不動産の正常価格を求めるに当たり、次の問に答えなさい。

  1. 一体不動産上の想定建物について、効用総積数を求めなさい。
  2. 開発法のみを適用して一体不動産の正常価格を求めなさい。

問5 対象不動産の鑑定評価額決定に関する次の問いに答えなさい。

  1. (一体利用)による増分価値のうち、対象不動産に帰属する増分価値(対象不動産への配分額)を「総額比」により求めなさい。
  2. 対象不動産の鑑定評価額を決定し、鑑定評価報告書上、記載が必要な事項を含めて表記しなさい。

別紙1〔指示事項〕及び別紙2〔資料等〕はかなりの分量になりますので割愛させていただきます。

不動産鑑定士試験はある程度「暗記」が必要

以上、短答式試験の「行政法規」「鑑定理論」の2科目、論文式試験の「民法」「経済学」「会計学」「鑑定理論」の4科目から1問ずつ過去問を紹介させていただきました。

いかがだったでしょうか。

難しそうでやる気がなくなってしまったかもしれません。

特に論文式試験は初めて見ると何を聞かれているのか、それすらまったく分からないかもしれません。

でも、全然大丈夫です。

  • 基本的な文言、定義、要件等は覚える
  • テキストを何度も読んで理解する
  • 過去問を解いてみて、分からなくても解答を書いてみる(最初は答を書き写してもOK!)

これをひたすら繰り返しているうちに段々とできるようになるはずです。

鑑定理論の論文式試験では、「不動産鑑定評価基準」の「暗記」が必要ですが、「暗記」は筋トレみたいなもの。毎日コツコツ憶えることでしっかりと記憶に定着します。

本サイトでは、インプットとアウトプットのコツ、毎日コツコツ継続するコツ、記憶に定着させるためのコツなどもご紹介しておりますので、これらも参考にしていただければと思います。。

まとめ

以上が本記事でお伝えしたかった内容です。これまでお話ししてきたことをまとめると以下のとおり。

  • 不動産鑑定士試験の出題科目は短答式試験では「行政法規」「鑑定理論」の2科目、論文式試験では「民法」「経済学」「会計学」「鑑定理論」の4科目。各科目から1問ずつ過去問を紹介
  • 最初は難しく感じるかもしれないが、①基本的な文言、定義、要件等は覚える、②テキストを何度も読んで理解する、③過去問を解いてみて、分からなくても解答を書いてみる(最初は答を書き写してもOK!)、これをひたすら繰り返すうちに段々とできるように。
  • 鑑定理論の論文式試験では、「不動産鑑定評価基準」の「暗記」が必要。「暗記」は筋トレみたいなもの。毎日コツコツ憶えることでしっかりと記憶に定着

この記事が皆さまのお役に立つと嬉しく思います。

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